常温常湿希望

温度20℃湿度50%が理想です。

迎賓館赤坂離宮和風別館

迎賓館赤坂離宮にはこれまでも何回か行っていますが、今回、和風別館に行きました。

和風別館の参観はガイドツアー形式になり、予約が必要です。
予約申込やキャンセルはこちらのページから⇒迎賓館赤坂離宮の一般公開

入り口で金属探知のセキュリティチェックを受けて入ります。ここで地図や見どころが書かれた立派なリーフレットと別館参観者用のバッジが配られます。バッジは五七の桐紋です。
f:id:Melonpankuma:20180317154154j:plain

予約しているため優先的にセキュリティチェックを受けられます。開館と同時に入ったので、主庭一番乗りで気分上々。花壇が、前は葉牡丹だったのが黄色のパンジーに変わっていました。
f:id:Melonpankuma:20180317154155j:plain

今回もよい天気です。
f:id:Melonpankuma:20180317154156j:plain

主庭の奥に張られている白テント前に十数名の参加者が集まりました。受付をすませ、いよいよ和風別館への参観が始まります。

迎賓館赤坂離宮は外国からの賓客を接遇する施設です。西洋風の歓迎をするには本館で足りますが、日本的なおもてなしのできる施設の必要性が高まり、昭和49年(1974)に和風別館と日本庭園が作られました。設計は、戦後日本を代表する大建築家の谷口吉郎氏によるものです *1 。谷口氏は「あくまで本館がシテで、別館はワキ」と、豪華な本館と対比するように、別館には日本の美意識にある静かな佇まいを意匠しました。

別邸へは本館主庭から日本庭園を通って向かいます。梅の季節が終わり、この時期、日本庭園は寂しい限り。
f:id:Melonpankuma:20180317154157j:plain

本邸前のお池には立派な錦鯉がたくさん。
f:id:Melonpankuma:20180317154158j:plain
別邸前に広がる池は、元は水盤として作られて20センチ程の深さだったそうです。そこに当時の総大臣であった田中角栄氏の提案で錦鯉30匹ほど放たれたそうですが、鯉の生育には浅すぎたそうです。その後倍の深さにしましたがまだ足りず、さらに80センチまで掘り下げて今の形になったということでした。鯉は紅白、三色、山吹黄金、銀松葉と様々。もちろん、天皇陛下のご提案で生み出された鰭長錦鯉もいて珍しいのですが、ガイドさんについて歩くツアーなので錦鯉を観察する間も与えられず、先に進むよう促されます。

本邸脇に並べられた盆栽。
f:id:Melonpankuma:20180317154159j:plain
来賓の際にはこちらのものが玄関に飾られるそうです。明らかに数百万クラスの見事なものが並んでいるのに、ガイドの話は自動水やり機を導入したので担当者が休出して水やりをしなくてもよくなったという話だけ。説明がなくてもいいから、せめて近くで見せてもらいたかった。

 

そして、いよいよ室内へ。建物内は撮影禁止なので、玄関でカメラやケータイをバッグにしまうよう指示があります。

玄関の床は、玄昌石(ブラックスレート)が敷き詰められています。玄昌石は、迎賓館本館の玄関ホールの市松模様の床にも使われています。あちらは表面研磨されていますが、別館の方は割肌仕上げです。

見上げると、天井の窪みや電灯が六角形でした。六角形は谷口吉郎氏がよく使うモチーフです。

書家西川寧氏による游心亭の銘板がありました。遊がさんずいなのは、水に縁のある建物だから。遊心は文字通り「心を遊ばせること。心をほしいままにして楽しむこと」という意味で、この別邸が賓客に寛いでいただくための施設であることを示しています。

壺庭には孟宗竹と白川砂と貴船石。貴船石は、後から当時の総理大臣であった中曽根康弘氏の提案で入れたものだそうです。

試しに、上の写真から貴船石を画像処理で除いてみました。
f:id:Melonpankuma:20180322181640j:plain
随分と印象がかわりますね。

上り框で靴を脱いでスリッパに履き替えます。ここで、決して土壁に触れないようにときつく注意がありました。塗り直しが数千万単位になると脅し気味でした。京都西陣聚楽跡地で産出される本聚楽土を使用した聚楽壁のようですが、果たしてそこまで高くつくものか。色の統一感をもたらすために、全部屋塗り替えという話なのかもしれません。

主和室は47畳敷きの大広間で、中央には掘り炬燵式の座敷で、高さが変えられるテーブルが設置されています。天井には、水盤からの光の反射がよく入るように勾配があり、その工法は竿縁天井杉中杢敷目板張り、つまり、天井板を竿と称する細い材で押さえて天井を張り、杉中杢と呼ばれる杉の樹心に近い部分から得られる板を用い、板張りの目透かし部分の裏側に敷目板を用いたものです。この勾配は、雨が多く夏の暑い気候で生まれた、日本建築の特徴である軒の出の深い屋根を連想させます。大きな窓からは座っていても日本庭園がよく見えるようになっていて、目線に合わせて築山に梅が植えられているのがわかります。床の間には白磁の清水焼が飾られていました。

主和室から奥に進むと、廊下の途中に宮川香山の染付壺があったのですが、「説明が始まりますから」と追いたてられて、見ること叶わず。こんなのばっかり。

次はカウンターのある古民家風の料理室。主和室よりも少人数で使われ、お寿司や天ぷらなどが振る舞われるようです。

その先は茶室になるのですが、その前に待合室としても使われるスペースがあります。玄昌石の床に、厚さ40センチくらいありそうな一枚板の長椅子、そして、つくばいがあります。

茶室は随分と変わった設えで、4畳半のお茶席が一段高く舞台のようになっていて、賓客はその回りの椅子に腰掛けて、お点前を眺められるになっています。正座が苦手な方も多いからでしょう。京都大徳寺の僧侶による掛け軸が飾られていました。見学は以上で、壁に触れないよう注意して、もと来た道を戻ります。

 

f:id:Melonpankuma:20180317154200j:plain
ツアーはおおよそ40分。ガイド担当者によるのかもしれませんが、私が参加したツアーはゴシップネタ半分、施設の説明半分といった具合だったし、見る時間を与えられない場面が多々あって、正直物足りませんでした。

別邸から出て、本館内部を一回りしました。
f:id:Melonpankuma:20180317154201j:plain
有料エリアから出て前庭へ。奥に見えるAKASAKA Kタワーが邪魔ですねえ。

迎賓館を出て赤坂見附方面へ進むと、薬医門形式の東門が現れます。

f:id:Melonpankuma:20180317154202j:plain
元は紀州藩徳川家中屋敷表門でした。

ランチは赤坂見附のやげんぼりで八坂。
f:id:Melonpankuma:20180317154204j:plain

ご飯をお代わりして、最後はお茶漬けでいただきました。
f:id:Melonpankuma:20180317154153j:plain

*1:他に東宮御所東京国立博物館東洋館、東京国立近代美術館、帝国劇場などを設計した