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暁斎・暁翠伝─先駆の絵師魂!父娘で挑んだ画の真髄─(前期)@東京富士美術館

暁斎好きが、2時間かけて東京富士美術館に行ってきました。
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といいつつ、多摩地域に仕事に出たついでだったので時間が押して閉館時間を睨みつつ駆け込んだのでした。

暁斎・暁翠伝 ─先駆の絵師魂!父娘で挑んだ画の真髄─」展です。
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www.fujibi.or.jp

近年人気を集め、話題の展覧会も次々開催されている河鍋暁斎。本展では幕末から明治前半の画壇において、狩野派絵師として、また様々な画派を貪欲に学びながら幅広い作風と領域で活躍した暁斎と、その長女で、柔らかで色彩豊かな美人画や小児図を得意とし、時には父・暁斎と同様の勇壮な、あるいはユーモラスな作品をも描いた女流画家・暁翠に焦点を当てます。 

新館で受付をすませた後3階に上がって本館の展示室へ向かうと、その途中に《新富座妖怪引幕》の複製が飾られていました。縦401.0×横1704.0㎝の巨大な引幕です。話には聞いていましたが巨大。暁斎が酒を楽しみつつ4時間で書き上げたという逸話が残っていますが、とにかく大きすぎます。本作品に残っている足型もさほど大きくないところからして、それほど体の大きくない暁斎が4時間で。どれだけ精力的な絵師だったのかと驚くばかりです。

以下、 いつものように気になったものについてメモを残します。

第1幕 暁斎

暁斎「伝」説~エピソード「画鬼暁斎

3-1《蛙の人力車と郵便夫 暁斎 紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
文明開化の情景を蛙の擬人化で描いたもの。

4-1《毘沙門天像 暁斎 嘉永元年(1848)紙本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
暁斎が17才の時に免許皆伝の許しを得た作品。

5《枯木寒鴉図 暁斎 明治14年(1881)絹本 墨画 榮太樓總本鋪蔵》
特別出展。明治14年に開かれた第2回内国勧業博覧会に出品して妙技2等賞牌(日本画の最高賞)を受賞した。値段を「百円」としたところ、日本橋榮太樓が購入したため話題になったとか。米一俵の価格が明治15年は2.8円らしいので、ざっと現代の価格に計算して34万7千円。今となれば、ずいぶんお得な買い物だったような。

絵師の魂、下絵の線に宿る

8-1《文読む美人 暁斎 明治21年(1888)頃 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
竹の屏風にしなだれかかって、闘鶏図の小袖に名古屋帯、高く結った唐輪髷、左手を懐手に文を読む小顔の美人が描かれている。

9-1《文読む美人 下絵 暁斎 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
上作品の下絵。帯の長さ、左手、髷の長さなどに修正がある。

11-1《日本武尊熊襲退治 下絵 暁斎 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
日本武尊が弟を襲撃する場面を描いたもの。父の寵妃を奪った兄大碓命を捕まえ、押し潰し手足をもいで薦に包み投げ捨て殺害する。下絵にしても非常に躍動的。

骨から描く、骨格~肉付け~着付けの画法

14-1《夕涼み美人(骸骨) 下絵 暁斎 紙本 墨画淡彩》
着図法を意識して骸骨まで意識して人物を描いた。

15-1《人物動態習作(1)男女、子供 暁斎 紙本 墨画、朱 河鍋暁斎記念美術館蔵》
左頁に二人の子供、右頁に手を取り合う男女を描いたもの。どちらも裸体に重ねて衣を描いている。

絵師・暁斎

①動物画

17-1《鯉魚遊泳図 暁斎 明治18年(1885)-19年(1886) 絹本 墨画金彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
一部金彩。悠々と泳ぐ九尾の鯉と小魚や小海老。様々な視点から鯉の姿体が描かれている。ジョサイア・コンドル旧蔵品でコンドルの『Painting and Studies Kawanabe Kyosai』で本図の一部を元に《鯉之図》を描いている。

21《動物図巻 暁斎 明治11年(1878)紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
展示部分は、弟子達に描いた手本。人の生首を咥える狐、猪、骸骨から出てくる蜥蜴、狸、栗鼠。

美人画

22-1《極楽太夫図 暁斎 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
華やか着物を身に着け、右肩を下げて後に身を反らす太夫。帯の布袋と唐子は賽の河原の地蔵と水子、袖の寿老人は閻魔大王、裾の壺は地獄の竈で恵比寿と大黒は地獄の獄卒である。上下対い鶴紋の屏風には雲と満月、水流と色鮮やかな菊が描かれている。

23《美人観蛙戯図 暁斎 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
本展で最も気に入った作品。糸瓜の木陰で、桜桃模様の着物を着て団扇を手にしゃがみこんだ美人が蛙達の狂態を眺めている。美人の化粧、指と脛が顕になっているのが目に残る。

24-1《見立七福神之内 花見弁天図 暁斎 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
満開の桜の下、金色の冠に赤い着物でかざすように左手を上げて遠くを眺める女の後ろ姿。貼色紙には、青空に月と枇杷、もう一枚には水景が描かれている。着物の模様が苧環

25《『惺々狂斎画帖(二)』(22図) 暁斎 明治3年(1870)以前 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
偐紫田舎源氏に取材した鐘ヶ池の部分には、水草を描いた絹地が貼ってあり、その下に黒髪がゆらめく様が表現されている。

③道釈人物画

27-1《風神雷神図(双幅) 暁斎 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
差幅は強風を起こして空中で勇ましくポーズを決める風神。一方、右幅は虎毛の脛当てをした雷神が何やら神妙な顔で下界を覗き込んでいる。どうやら海に落とした太鼓を恐る恐る引き上げている。雷神の低空ホバリングを描いた珍しい一枚でした。

30-1《伊邪那岐伊邪那美 暁斎 明治3年(1870)以前 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
二神が海中から出現させたオノゴロ島を背景に、番の鶺鴒とお腹の大きな伊邪那美を支える伊邪那岐を描いている。

31-1《幟鍾馗之図 暁斎 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
鍾馗が小鬼を懲らしめ、空には鯉幟や木瓜紋の旗が翻る。衣装も髭も実に緻密に描かれている。

④幽霊・妖怪変化図

37-1《猩々の酒宴 暁斎 明治12年(1879)以降 絹本 着色》
赤月の下、猩々たちが酒を楽しんでいる。酒瓶の縁に集っう三猩々、空には鶴に乗って駆けつける猩々、地面には酔いつぶれて盃を布団に眠り込む猩々が描かれている。

38-1《飴天狗 暁斎 紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
竹の皮についた赤飯の残りを目当てに先を争って食べる小天狗を描いたもので、当時の世相を風刺したものとか。天狗ホイホイかと思いました。 

⑥風景・山水画

44-1《水墨山水図 暁斎 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
鴉図などの背景の他で暁斎山水画をあまり観たことがなかったが、なかなかどうして山水画も格好いい。

46《電信柱 画:暁斎、賛:山岡鉄舟 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
柱絵で文明開化の象徴である電信柱を描いたもの。山岡の賛で「聴貴聡智貴明」とあるのは「聴くことは聡きを尊び、智は明なることをことを尊ぶ」の意。

暁斎の戯画・風刺画

48-1《書画展覧余興之図 暁斎・中島杉陰・平戸星洲・中根半嶺・小川観斎合筆 明治14年(1881)頃紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
第ニ回内国勧業博覧会に出品した五人の合作。画面中央で大紙面を前にして大筆で取り掛かろうとしているのが暁斎か。

49-1《人物三長図 暁斎 紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
書を読む福禄寿の高い頭頂を剃る脚長と、落ちる髪を皿で受ける手長が描かれている。

暁斎のデザイン

64-1《団扇絵 月に狸 暁斎 錦絵河鍋暁斎記念美術館蔵》
月を見上げる和尚姿の狸。蛙印。

間奏 暁斎・暁翠、父娘二代の能・狂言画 

80《膏薬練 暁斎 紙本 墨画淡彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
画題は狂言の『膏薬練』による。鎌倉と上方の薬屋が効能比べをして、双方の鼻の頭に薬をつけて吸い比べをして目を回している。お酒好きで知られる暁斎が、酔って描いたと思われる。

90《十二ヶ月図屏風(六曲一双) 暁斎 明治15年(1882) 紙本 着色》
いわゆる月次絵。十一月まで出来たところで暁斎が亡くなったため、十二月の部分は暁斎が遺した鴉の絵を暁翠が選んで追加した。

第2幕 暁翠伝 

「伝」承・絵師の魂、暁斎から暁翠へ

94《柿に鳩図 暁斎 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
暁斎が5才の暁翠に手本とした与えた画。くの字に曲がった枝に止まる鳩。枝の先には赤く熟れた柿が生っている。

96-1《霊山群仙図 暁斎 文久年間(1861~64)~明治25年(1892) 絹本 着色、金彩 河鍋暁斎記念美術館蔵》
こちらは暁斎と暁翠の共作。文溪堂の大渓平兵衛の注文に応じて描かれた金碧山水図で、暁翠が着色して完成させたもの。鶴、牡丹、馬に乗る仙人や唐子らが、実に細やかに描かれている。

96-2《寛永時代美人図 暁翠 大正5年(1916) 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
96-3を手本にして描かれたもの。暁斎が描いた下絵の猫が狆になっている。山水図屏風や調度品を描き加えた。

96-3《猫と遊ぶ美人群像 下絵 暁斎 紙本 墨画 河鍋暁斎記念美術館蔵》
暁斎が描いた下絵。 猫を抱いた女の後から覗き込む二人の女。手前に幼女が描かれている。

絵師・暁翠

①動物画

100《帯(狸図、萩に鴉) 暁翠 絹本 墨画淡彩》
夏用の半幅帯 に、萩、月、狸の家族が描かれたもの。

美人画

101-1《紫式部清少納言図(双幅) 暁翠 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
右幅に積み上げた絵巻と紫式部、左幅に几帳から顔を出す清少納言を描いている。日本の歴史上の人物を視覚化した菊池容斎筆『前賢故実』の挿絵に基づいている。

③神仏画

106《百福図 暁翠 絹本 着色 河鍋暁斎記念美術館蔵》
百人の福女が、歌留多、酒、音楽、囲碁、にらめっこ、人形遊びなどをする姿を描いたもの。父親譲りのサービス精神が発揮されている。展示室の出口間際に、本図を元にした西陣織が展示されていました。ちらとしか観られませんでしたけど。

ここでタイムアップです。半分もいかないうちに閉館案内のアナウンスを聞いたので、浮世絵は飛ばして最後の展示室は殆ど見ていません。終盤になって通訳を連れた大声の外国人団体がぞろぞろやってきたので、別の部屋に逃げたりしたのでかなり見逃しました。また後期も観に行くチャンスがありますように。

 

八王子駅までバスで戻って、南口近くにある奥芝商店 八王子田代城で晩ご飯。4月限定メニュー国産鶏せせりと春のかき揚げカリーに田代城限定薬膳チキンスープを合わせて、マイタケと無料キクラゲのトッピング。
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豆苗がシャキシャキしておいしかった。