アジアギャラリー@東京国立博物館 東洋館
平成館のタイ展の後、関連する展示品がありそうなので東洋館へ行きました。東博の常設展では多くの収蔵品の写真撮影が可能なので、特別展で得た新しい知識を別の展示品ではありますが、記録に残して手元に置くことができます。実にありがたい。
東南アジアに関する展示は、東洋館地下1階にあります。
東洋館 11室 クメールの彫刻
現在のカンボジアにおいて、9世紀初頭から600年余り続いたアンコール王朝の時代には、クメール族による独特の美術様式が完成しました。中でも11世紀末から12世紀にかけて造られたアンコール・ワットがその最盛期です。この部屋では10~13世紀にアンコールの寺院を飾った仏教およびヒンドゥー教の彫像、浮彫の建築装飾をはじめとする石造彫刻を展示します。いずれも第2次世界大戦中におこなわれた、フランス極東学院との交換品です。
《ナーガ上のガルダ 1組(5個) カンボジア・バプーオン入口と象のテラス アンコール時代・12~13世紀 フランス極東学院交換品》
ナーガはインド神話に起源をもつ蛇神で、東南アジアでは頭が七つある姿で現されることが多い。ガルダもインド神話に起源を持つ神鳥。ヴィシュヌ神の乗り物。インドにおいて猛禽類や孔雀は蛇を食べると解釈されていたことにより、ナーガと敵対関係にある。
《獅子 1躯 カンボジア・癩王のテラス アンコール時代・12~13世紀 フランス極東学院交換品》
獅子は寺院の会談の上、参堂の脇などに置いて守護神とした。前脚を伸ばして上体を立て、後脚は膝を少し曲げて中腰のような姿勢で臀部を突き出すのがカンボジアの獅子の特徴。
日本の寺院でいうところの狛犬のポジションらしい。
《ナーガ上のブッダ坐像 1躯 カンボジア、アンコール・トム東南部のテラスNo.61 アンコール時代・12世紀 フランス極東学院交換品》
禅定に入る仏陀を降り注ぐ雨から守るために、蛇神ナーガ(ムチャリンダ龍王)がとぐろを巻いた体を台座に、七つの頭をさしかけて守る様子を表した像。
蛇の鼻を犬のマズルや鳥の嘴のように表現するのが面白い。タイ展の《ナーガ上の仏陀坐像》もやけに蛇の鼻の穴が目立ちます。
《九曜像 1基 カンボジア、ネアック・タ・コン・スロック アンコール時代・11~12世紀 フランス極東学院交換品》
インド占星術に起源を持つ、九つの天体の神々。左から日輪、月輪、火星、水生、木星、金星、土星、羅睺星、計都星。星によって馬、象、獅子、雲など乗り物が異なる。
タイ展でも紹介されていましたが、日本人が血液型を話のネタにするように、タイでは誕生曜日ごとの守護仏を拝み、占いでは誕生曜日をネタにするんだそう。
《ブッダ三尊像 1基 カンボジア・アンコール アンコール時代・12~13世紀 フランス極東学院交換品》
中央のナーガに坐す仏陀。右に四本の腕を持つローケシヴァラ(観音菩薩)、左にプラジュニャーパーラミター(般若波羅蜜多菩薩)を現す。ジャヤヴァルマン七世の時代に寺院に奉納する目的でこの三尊が多く作られた。仏陀は本人、脇侍は父母であるといわれている。
東洋館 12室 東南アジアの金銅像
インドシナ半島やインドネシアでは、古代よりインドの影響を受けて仏教やヒンドゥー教の彫像が数多く制作されました。それらはいずれも地域特有の発展をとげ、独自の美術様式が花開きました。ここでは、インドネシア、カンボジア、タイ、ミャンマーの仏教像、ヒンドゥー教像を、金銅像を中心に展示します。
《如来坐像 1躯 タイ スコータイ時代・14~15世紀》
小さい肉髷に尖った螺髪、薄い大衣、左右がつながった眉、張りのある体、繊細な指先のつくり。随所にスコータイ時代の特徴を備えている。
《如来立像 1躯 タイ ドヴァーラヴァティー時代・7~8世紀》
薄い大衣、左右がつながった眉、小さく張った小鼻、厚い唇。衣に襞がない仏像の例。
《ヴィシュヌとガルダ像 1具 カンボジア アンコール時代・12~13世紀》
ヴィシュヌははヒンドゥー教の神で、ブラフマー、シヴァとともにトリムルティの1柱を成す重要な神格。偶像としては、青い肌の色で4本の腕を持つ姿で描かれる。神鳥ガルダを乗り物にする。
《ハヌマーン立像 1躯 カンボジア アンコール時代・11世紀》
ハヌマーンはインド神話におけるヴァナラ(猿族)の1人で風神ヴァーユの化身。名前は「顎骨を持つ者」の意。変幻自在の体はその大きさや姿を自在に変えられ、空も飛ぶ事ができる。大柄で顔は赤く、長い尻尾を持ち雷鳴のような咆哮を放つ。
東洋館で一番愛らしいと評判の小像。
東洋館 12室 東南アジアの陶磁
《黒褐釉象形容器 1口 クメール アンコール時代・12~13世紀》
クメール陶器には動物の形をした器がよくみられる。中でも象は人々の生活に身近で重宝する動物であり、丸々と愛らしい姿でよくあらわされている。整った器形やつやのある黒褐釉から安定した焼成技術が伺える。
タイ展のよい復習になりました。
日タイ修好130周年記念特別展「タイ ~仏の国の輝き~」展@東京国立博物館 平成館
暑い日が続く中、東京よりも暑そうな国の展示を観るため、トーハクの平成館へ。
タイ展です。
今年(2017年)は日タイ修好130周年にあたります。この節目の年に修好記念事業として展覧会を開催します。
タイでは、仏教は人々の暮らしに寄り添う大きな存在であり、長い歴史のなかで多様な仏教文化が花開きました。本展では仏教国タイについて、タイ族前史の古代国家、タイ黎明期のスコータイ朝、国際交易国家アユタヤー朝、現王朝のラタナコーシン朝における仏教美術の名品を通じて、同国の歴史と文化をご覧いただきます。また、日本とタイの交流史についても合わせて紹介します。
- 第1章 タイ前夜 古代の仏教世界
- 第2章 スコータイ 幸福の生まれ出づる国
- 第3章 アユタヤー 輝ける交易の都
- 第4章 シャム 日本人の見た南方の夢
- 第5章 ラタナコーシン インドラ神の宝蔵
びょうぶとあそぶ@東京国立博物館 本館
東京は今日も暑くなりました。例年なら梅雨の中休みとかいう日があったりする時期ですが、今年は既に夏突入してしまったような気配。昼間になれば、外にはとてもいられません。こんな時こそ、冷房完備の博物館に行きましょう。
東京国立博物館の「びょうぶであそぶ」に行ってきました。
本館1階、特別5室と4室で開催中。トーハク本館の玄関を入ってすぐ、正面の大階段の左に入り口があります。
こちらは《◉松林図屏風 6曲1双 長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 紙本墨画 東京国立博物館所蔵》のコーナー。展示室に入り森の香りと爽やかな風を感じながらスクリーンの裏をぐるりと回って、このスペースに到着します。
背景のスクリーンには、屏風には描かれていない想像の風景が映し出されます。波の音、滑空する海鳥、花の咲く里山を感じながら、屏風の内包する世界を感じます。
こちらでは靴を脱ぎ畳の上に上がって屏風を見られます。これが、気持ちいいのなんの。屏風に描かれた砂浜にいるようで、横になって眠りたくなりました。
眠気で頭が朦朧としたまま、特別4室へ。こちらは《群鶴図屏風 6曲1双 尾形光琳 江戸時代・17~18世紀 紙本金地着色 アメリカ・フリーア美術館蔵》のコーナーです。展示室のスクリーンに鶴が次々と降り立ち、スクリーンと並んで置かれた屏風の中に入っていきます。
そして、この高精細な複製品の見事なこと。実物を見たことはありませんが、まさに本物かと思うような迫力です。とても美しい。
普段なら、なんだ複製品かとなるところですが、複製品だから間近で見られる楽しみもあるし、そもそも本作品については、アメリカまで行かなきゃ本物だって見られないので、こういう形であれ《群鶴図屏風》を観られたのは良かった。
本展は9月3日まで開催されています。期間中、特に畳部屋には休憩がてら何度も通いそうです。
小笠原ビジターセンター
父島に行ってきました。旅行最終日に、お昼ご飯の時間調整もあってビジターセンターへ。
本当は父島初日にも来たのですが、島内観光を控えていたので、ツアーで寄るかもしれないと思い、詳しく見るのを止めたのです。
- 展示室1
- 展示室2 歴史文化系展示
- 展示室3 自然科学系展示
後で気がついたのですが、建物の裏である海岸側にはザトウクジラのモニュメントがあって、大変見栄えのよい写真が撮れるようです。
続きを読む高円宮家所蔵 根付コレクション@國學院大學博物館
明治神宮に花菖蒲を見に行った帰り、國學院大學博物館へ寄りました。
ただ今、國學院大學創立135周年・國學院大學院友会発足130周年記念特別展「高円宮家所蔵 根付コレクション」展が開かれています。
本展は全て撮影可です。
展示室には、根付、緒締、印籠合わせて300点近くの作品が並びます。当然ながら、全て小さく、造形が細かいので、単眼鏡があると便利です。
どれもこれも、細やかな細工が見事です。そして、たまにクスっと笑ってしまうものもあります。
《干しやまめ 桑原仁 象牙 2000年 10.5cm》
《七輪 桑原仁 象牙、金網 2001年 4.1cm》
《かぶと虫 河原明秀 黄楊、象牙、鼈甲 1980年 7.4cm》
《福わらい 山田洋治 黄楊 1996年 4.1cm》
《毛ウケゲン 山田洋治 黄楊 1990年 5.3cm》
《ぬっぺぽう 山田洋治 黄楊 1996年 4.2cm》
《夕霧 駒田柳之 象牙 1995年 5.6cm》
《花魁 駒田柳之 マンモス牙 1991年 5.6cm》
《久米仙人 駒田柳之 象牙 1988年 12.5cm》
《幽霊 駒田柳之 鹿角 1992年 7.4cm》
《鳥追 駒田柳之 黄楊 1992年 6.2cm》
《(古根付)西王母 景利 象牙、鉄刀木 19世紀 3.2cm》
《(古根付)達磨 東谷 木、象牙 19世紀 3.3cm》
印籠の展示もありました。
《(根付)チーズバーガー 細谷絹代 木、漆、貝 1998年(緒締)シェイク 細谷絹代 象牙、漆、アクリル 1998年(トンコツ)フライドポテト 高木喜峰 黄楊 1998年》
どうしたって、M字マークのフライドポテトが目立ちます。トンコツというのは、木などの固い素材でできた煙草入れの総称だそうです。
本展の根付がとても魅力的だったので、これからは積極的に和装もしようかなと思いました。