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再び鈴木其一展(前期)@サントリー美術館

ダリ展の後、すぐ近くの東京ミッドタウンへ移動し、二度目の其一展。

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何度見ても、よいものはよい。特に第三室は一日いても見飽きません。

今回は《芒野図屏風》の前で長く過ごしました。朝顔図屏風もいいけど、この渋さも飽きなくていいなあ。

 

一回目の時予習が不足だったのをいくつかおさらい。

 

三十六歌仙図屏風》で御簾に隠れている方が気になりました。三十六歌仙のうち女性は5人だけなので調べはすぐつきました。唯一の皇族、徽子女王(きしじょおう 斎宮女御)です。鎌倉時代に描かれた《佐竹本 三十六歌仙絵巻》でも御簾が描かれていました。御簾を描くのが徽子女王、顔を描かないのが小野小町というパターンのようです。

 

《牧童図》は、十牛図という禅の入門書を主題にした十枚の絵をモチーフにしたものです。内容としては、牛を探しに出て(尋牛)、足跡を見つけ(見跡)、牛の姿を見つけ(見牛)、力ずくで牛を捕まえ(得牛)、牛を手なずけ(牧牛)、牛の背に乗って家に帰り(騎牛帰家)ます。手に入れてみると牛のことを忘れ(忘牛存人)、自分のことを忘れ、全を忘れさり(人牛倶忘)、元通りの自然の美しさが現われ(返本還源)、悟りを得た童子はいつのまにか修行者の姿になって人を導くようになった(入鄽垂手)というものです。其一の絵では牛を力ずくで引っ張っていたので「得牛」のシーンであることがわかります。しかも白黒斑の牛。在来牛にも白黒の牛がいたんですね。

 

浅草寺の《迦陵頻図絵馬》は上半身が人で、下半身が鳥の仏教における想像上の生物、迦陵頻伽(かりょうびんが)を舞う姿を描いたもの。この舞いは祇園精舎の供養の日に迦陵頻伽が来て舞った様子を写した舞楽で、その歴史は古く、枕草子では「舞は」に「鳥の舞」と、源氏物語では「胡蝶」に「鴬のうららかなる音に、鳥の楽はなやかに聞きわたされて、池の水鳥もそこはかとなくさへづりわたるに、急になり果つるほど、飽かずおもしろし。」と記されてあります。今でも神宮などで見ることができるようです。

 

神功皇后伝図絵馬》《神功皇后武内宿禰図》は古事記日本書紀にある伝説で、神功皇后が後の応神天皇を懐妊中に、新羅攻めをした話に基づきます。進攻の日、皇后は御島神社航海の無事を祈り、髪を左右に分けて男髪みずらに結い、武具を着けて男姿になったそうです。武内宿禰は5代に渡る天皇に仕えたという伝説の忠臣で、胸に幼子(後の応神天皇)を抱く姿で描かれます。

 

 《道成寺図》(釣鐘図》は、先日国立古文書館で見た《道成寺絵詞》の話と同じ安珍・清姫伝説に基づくものです。能舞台は、道成寺の釣鐘再興の際、住職が女人禁制とするが、ひとりの白拍子が現れ舞いを踊るという条件で許してしまう。喜んだ白拍子は舞い、人々がうたた寝した隙に鐘を狙い引き落してその中隠れ消え失せます(鐘入り)。地響きに驚いた者たちが住職に知らると、住職がこの鐘にまつわる昔話(安珍清姫伝説)を語ります。その白拍子清姫の怨霊だと、住職は他の僧たちと鐘にむかって祈ると、鐘の中からは蛇体化した女が現れ、終に日高川へ飛び込み消え失せるという話。

描かれているのは、鐘に向かって供養の舞いを踊る白拍子が乱拍子を踏み、鐘入りするクライマックスシーンです。

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この舞台は衣装変わりが多いことも特徴で、中でも黒地に鎌倉紋と呼ばれる丸い金枠の柄が伝統的に使われます。

melonpankuma.hatenablog.com

 

高砂図》は世阿弥が書いた能「高砂」をモチーフにしています。都の見物にきた友成は、高砂の浜辺で松の落葉を掃く老夫婦に出会い、相生(あいおい)の松の由来を、高砂の松は「万葉集」、住吉の松は「古今和歌集」を表し、歌がたくさん詠まれる平和な世であることを象徴する松だと教えられます。そして我ら夫婦は、その松の精だと正体を明かし再会を約束して姿を消します。友成らが住吉の浜辺に行くと、波間から住吉明神が現れます。明神は舞い平和な世を祝福するという話です。

 

《菊慈童図》は重陽節句の起源になった話の能舞台をモチーフにしています。中国、魏の時代、麗縣山の麓から薬の水が湧き出し、水上を調べろとの命で勅使が山入ります。辿り着いたのは菊の花の咲き乱れる仙境で、そこに住む美しい少年は、なんと周の穆王の時代から七百年も老いることなく生き続けているという。少年は穆王に賜った枕に記された法華経の二句の妙文を菊の葉に書き、菊に宿った露が不老不死の霊水となって流れ出したという。経文を讃えて舞う少年は、枕を帝に捧げ、菊を掻き分けて姿を消したという話です。

 

おさらい、終わり。

絵の題材を知るとさらに楽しくなります。

 

其一がイイ男で出ている「麗しき花実」を読んだ後なので、前回とはまた違った目で作品が楽しめました。抱二の作品にも思わず注目してしまいましたよ。

麗しき花実 (朝日文庫)

麗しき花実 (朝日文庫)

 

そんなわけで、売店にあった棗がやけに魅力的に見えました。使うことないのに危ない、危ない。

 

帰りに和食ランチ。

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tabelog.com

ついお代わりしてしまい、食べ過ぎました。もう動けません。

 

 

■追記

10月2日、日曜美術館で「幕末の異端児 鈴木其一(きいつ)」の放送。

www4.nhk.or.jp

代表作《朝顔図屏風》と《風神雷神図襖》の構図を比較していました。確かに、よく似ています。

 

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