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円山応挙から近代京都画壇へ@東京藝術大学大学美術館

焦げ付くような陽射しの中、上野公園を突っ切って、東京藝術大学へ向いました。

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円山応挙から近代京都画壇展(キャッシュ)へです。
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okyokindai2019.exhibit.jp

この日、日向は焼け付くような陽射しでした。猛暑に備え薄着で出てきたのが失敗の元。美術館に入った途端に寒気が襲い、3階の展示室を半分ほど回ったところで冷えに苦しむ羽目になりました。そのせいで大乗寺の障子絵以外に目が行きませんでした。途中から腰の痛みを耐えるのが精一杯。地下2階の展示は、ほぼ素通り。

最終的に、一階のテラス席の日向で暖を取る始末。
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辛かった。

上野駅近くまで戻り、ようやく体が暖まったところで梅蘭へ。
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冷えは怖いですねえ。

月が変わって後期展示を見に行きました。
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折しも藝祭真っ只中。
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前回の失敗を教訓に防寒対策は万全です。

 

以下、前期・後期交えて、気になったものについてメモを残します。

すべては応挙にはじまる。

《1 ◎ 松に孔雀図 円山応挙 寛政7年(1795) 兵庫・大乗寺 
大乗寺の孔雀の間に描かれている襖絵で、ほぼ原寸大で松や孔雀が描かれている。金地に墨で描かれているものの、光の加減で松葉の緑が発色しているように覚える。障子を開けても閉めても松の枝が繋がるように構成されているとか。

《8 ◎ 群山露頂図 呉春 天明7年(1787) 兵庫・大乗寺
大乗寺の禿山の間に描かれている襖絵。蕪村の高弟であった呉春が、文人画風に渇筆の披麻皴を駆使して、高山を鳥瞰的に描いた。

《12 円山応挙像 山跡鶴嶺 制作年不詳》
弟子が応挙の姿を描いたもの。画風から細身で神経質な風貌を想像していたのだけれど、小柄で丸顔でまつ毛が長く髷が小さく親しみやすそうな雰囲気があって、なんとも意外でした。

孔雀、虎、犬。命を描く。

《32 ○ 孔雀図 岸駒 江戸時代後期 株式会社 千總》 
北斎の描く妖怪画のようなおどろおどろしいタッチの孔雀。細密で迫力がある。

《37 木菟図 渡辺南岳 江戸時代後期 東京藝術大学
松の幹がくの字に折れ曲がったところに止まるコノハズク。静寂な空気感。目を閉じ、尖った耳に緊張がある。

《38 雪中鷲図 都路華香 明治34年(1901)》
雪の交じる激しい風に堪えて体を膨らませる鷲。激しい風の音が聞こえそうなほどだが、画面のこちらを見据える瞳がとても静かに思えた。

《43 花卉鳥獣図巻 国井応文・望月玉泉 江戸時代後期~明治時代 京都国立博物館
国井応文は応挙の孫。四条派の望月玉泉との合作で、細やかな彩色が施された花や動物を描いて絵巻にした。付箋を貼りそれぞれの名前が添えられている。
展示部分の最後の方に、小型の犬が描かれていた。チンと思われる犬には拂菻狗とある。払菻(ふつりん)は、中国の史書に出てくる東ローマ帝国のこと。当時の中国語で「異国の犬」という意味を持つ短吻の愛玩犬である。その隣の長毛小型犬には水犬と書かれてあった。ショータードッグ、つまりは鳥猟犬である。チンと同じくらいの短軀で描かれているところを見るとキング・チャールズ・スパニエルか。

《46 狗子図 円山応挙 安永7年(1778) 敦賀市立博物館》
雪の中で戯れる斑と二匹の白毛の子犬。やわらかな毛でコロンとしたフォルム、ぐにゃぐにゃの骨格が愛らしい。

《42 花鳥図 松村景文 江戸時代後期 公益財団法人阪急文化財逸翁美術館
景文は、四条派の始祖・呉春の異母弟。春の花に止まる様々な小禽が描かれている。サクラ、モクレン、バラに、オナガメジロイカル、ホトトギスジョウビタキ、スズメ、キビタキシジュウカラ等。

《47 春暖 竹内栖鳳 昭和5年(1930) 愛知県美術館(木村定三コレクション)》
白茶の子犬を描いたもの。栖鳳が写実から出発して簡素化を追求した結果、応挙の描く子犬と似た所に到達したのが面白い。

《49 雪中燈籠猿図 森狙仙 江戸時代後期 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館
雪の石灯籠に戯れる日本猿を描いたもの。枝に手を伸ばした猿が落とした粉雪が、灯籠の中にいる小猿の興味を引いている。輝く雪の白さ、猿の穏やかな表情と毛の柔らかさが巧みに描かれている。

《55 しぐれ 木島櫻谷 明治40年(1907) 東京国立近代美術館
写実的な動物を描く木島櫻谷の大作にしては珍しく、この屏風に描かれた鹿は、どこか牛のよう。第1回文展2等賞。

山、川、滝。自然を写す。

《64 ◎ 保津川円山応挙 寛政7年(1795) 株式会社 千總》
応挙の絶筆。題材の保津川は応挙にとって故郷の川だという。白い水流は滑らで細やかなドレープが、まるで絹布のよう。岩清水が溢れて、右隻と左隻それぞれの両側から中央に向かって流れる。

《77 国道真景図巻 森徹山 江戸時代後期 黒川古文化研究所
街道沿いに田畑や民家が広がる様を淡々と写実的に描いたもの。真景と題されているが、現代の我々から見たら、まるでおとぎの国のよう。

《85 嵐山春暁図 円山応挙 安永9年(1780) 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館 
渡月橋、月が浮かぶ大堰川、春霞がかかる桜の嵐山を描いたもの。写実性が見事で、まるで近代絵画のよう。その分、面白みに欠けるのだけれど。

《84 山水図 木島櫻谷 明治時代後期 株式会社 千總》
古典的でありつつ、西洋画的な写実性を獲得したこの辺りの作品が、私にはとても面白い。圧倒されるほどの大作であるのが、さらによい。

《88 雨中嵐山 幸野楳嶺 明治15年(1882) 宮内庁三の丸尚蔵館
雨が降りしきる桜の嵐山。筏師が川を下り、川面からは靄が立ち上がる。

《90 池畔驟雨図 望月玉泉 明治21~24年(1888-91) 京都・長岡天満宮
湖畔に降りしきる雨。緻密に描かれた木々に真っ白な鶴の姿が光る。湖面の蓮はやけに大きい一方で、竹林のある集落は極端なまでに小さく描かれて、画面に奥行きを与えている。

《91 墨堤春暁 川端玉章 明治23年(1890) 東京藝術大学
街道の桜を描いたものだが、桜が奇っ怪に手前に枝を伸ばしている。

美人、仙人。物語を紡ぐ。

《97 ○ 江口君図 円山応挙 寛政6年(1794) 静嘉堂文庫美術館 
観阿弥作の能「江口」を題材に描いた美人画西行法師と江口の里の遊女のやり取りをテーマにしたもので、幽霊になった江口の君が身の上を語った後に白象に乗って空に消えていく話。応挙は白象の背にゆるりと腰掛ける、立兵庫に前帯で四つ花菱の打ち掛けを羽織った、決して華美ではない姿の美人を描いた。

《106 楚蓮香之図 上村松園 大正13年頃(c.1924) 京都国立近代美術館
楚蓮香は唐の時代の美女で、外を歩くと良い香りで蝶が寄ってくるほどだったという。展示室にはいくつもの美人画があったが、その中で松園は応挙を正統に引き継いでいるように思えた。

 

後期は全作品の半分以上が展示替えしていたが、一時間半程度の滞在でした。外に出ると、黒い雲が広がってきていて、今にも降り出しそうな気配。

 

夜中に通過する台風に備えるため、松屋上野店に先月末オープンした茂助だんごで甘味を購入。さらに、アルサスローレンで可愛らしいパンをいくつか。
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これで台風の備えは万全です。