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三十六歌仙画

出光美術館で開催中の「歌仙と古筆」展で、柿本人麻呂がどう描かれてきたかを理解することができました。しかし、他の三十六歌仙はというと、まだまだ勉強不足。女流歌人、武官、僧、翁を見分けられたとしても、黒袍の衣冠になるとお手上げです。
ここに各歌仙の典型的なポーズをまとめておこうと思います。

藤原公任選の三十六歌仙

左方(18)

①柿本人麿(かきのもと の ひとまろ)
凡河内躬恒(おおしこうち の みつね)
大伴家持(おおとも の やかもち)
在原業平(ありわら の なりひら)
素性法師(そせい ほうし)
猿丸大夫(さるまるのたいふ)
藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)
藤原敦忠(ふじわら の あさただ)
源公忠(みなもと の きんただ)
斎宮女御(さいぐう の にょうご)
藤原敏行(ふじわら の としゆき)
源宗于(みなもと の むねゆき)
藤原清正(ふじわら の きよただ)
藤原興風(ふじわら の おきかぜ)
坂上是則(さかのうえ の これのり)
小大君(こおおきみ)
大中臣能宣(おおなかとみ の よしのぶ)
平兼盛(たいら の かねもり)

右方(18)

紀貫之(き の つらゆき)
④伊勢(いせ)
山辺赤人(やまべ の あかひと)
僧正遍昭(しょうじょう へんじょう)
紀友則(き の とものり)
小野小町(おの の こまち)
藤原朝忠(ふじわら の あつただ)
藤原高光(ふじわら の たかみつ)
壬生忠岑(みぶ の ただみね)
大中臣頼基(おおなかとみ の よりもと)
源重之(みなもと の しげゆき)
源信明(みなもと の さねあきら)
㉖源順(みなもと の したごう)
清原元輔(きよはら の もとすけ)
藤原元真(ふじわら の もとざね)
藤原仲文(ふじわら の なかふみ)
壬生忠見(みぶ の ただみ)
㊱中務(なかつかさ)

歌仙の描き分け

佐竹本、業兼本、嵯峨本『三十六歌仙』、《三十六歌仙図 鈴木其一》などを見比べたおおよその傾向を下にまとめます。

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女流歌人(5)

④伊勢:裳だけなので袖の色数が少ない、右手を顔に

小野小町:裳唐衣。顔を最も隠しぎみ。額に手を当てる

斎宮女御:几帳に隠れる

小大君:裳唐衣で左向き

㊱中務:裳唐衣で右手に扇、もしくは、顔が下向き

僧侶(2)

僧正遍昭:赤黄色の法衣で右上を向く

素性法師:画面左向き

武官(4)

在原業平:青衣で矢を背負い右手を顎

藤原高光:赤衣で矢を背負う

壬生忠岑:黒衣か白衣。片膝付き足裏を見せた背姿

藤原敏行:黒衣の武官姿、文官姿の時は右手を顔に

翁(5)

柿本人麻呂:腕を開き、くつろいだ姿勢で画面左上を向く

山部赤人:目尻に皺。狩衣で画面右を向き両手を膝

⑪猿丸太夫:黒袍か狩衣で画面左向きの横顔

㉖源順:白狩衣か赤袍で画面右向きの横顔

坂上是則:立てた笏を右手で押さえ画面右を振返る

文官(20)

直衣・狩衣(9)

源重之:正面向き。左膝を立て扇を持った左手で頬杖

源信明:左手で頬杖をつき画面右方向に体を横に傾けて思案顔

藤原清正:画面右を振返る

藤原興風:左膝を立て手を顎に。衣冠束帯の時は左向きの横顔

清原元輔:赤衣もしくは画面右上を見て右手の笏を肩にかつぐ

藤原元真:太め。右もしくは右上を向いた横顔で萎烏帽子が前に倒れる

藤原仲文:右を向いた横顔で萎烏帽子が後に倒れる

壬生忠見:丸顔、右手に扇

平兼盛:太め。㉕と比べてより丸顔で体を傾ける

衣冠束帯(11)

紀貫之:立てた笏を左手で押さえる

凡河内躬恒:笏を持つ左手を顎に左膝を立てて振返る

大伴家持:右手に笏を持ち、画面右を振返る

紀友則:両手を腹の前で組んで目をつぶる

藤原兼輔:右手笏を持ち顔の前に立てる

藤原朝忠:瓜実顔もしくは太めで笏を持つ横顔

藤原敦忠:手をかざして画面右を振返る

源公忠:立てた笏を右手で押さえる

大中臣頼基:大きく太めの体。画面右向きで持ち物なし

源宗于:画面左向きで丸顔

大中臣能宣:㉓と比べてより画面左向き。もしくは、笏を両手で構える

 

いろいろ見比べていくと、業兼本、嵯峨本『三十六歌仙』あたりがより参照されているように思います。衣装やポーズが共通していて、見比べないと判断がつかないのが、㉓源宗于と㉝大中臣能宣、㉕藤原清正と㉟平兼盛です。