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速水御舟の全貌-日本画の破壊と創造-(前期)@山種美術館

山種美術館【開館50周年記念特別展】 速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造―展、初日に伺いました。

明るい時間に来るのは久しぶりです。

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山種美術館と言えば御舟というくらい、それはそれは素晴らしいコレクションなのですが、それを惜しげなく一挙公開。しかも、他蔵を含めた速水御舟の代表作が並ぶのは、実に23年ぶりなんだそうです。これを逃したら、次にいつ会えるかどうか。決して見逃してはいけません。

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 速水御舟(1894年~1935年)は浅草に生まれ、従来の日本画にはなかった徹底した写実、細密描写を行い、その後代表作「炎舞」のような象徴的・装飾的表現へと進んだという。

第 1 章 画塾からの出発

速水御舟《萌芽》1912年(18才) 東京国立博物館

18才の作品で、文展落選後、巽画会展で銅賞を得た作品。印が手描き。アンリ・ルソーを連想しました。

 

速水御舟《錦木》1912年(18才) 山種美術館

能「錦木」を題材にした作品。白い衣が目を惹く。表面がキラキラしている。

 

速水御舟《焚火(秋の朝)》1913年(19才) 霊友会妙一コレクション

焚火から立ち上がる煙、落ち葉を掃くものうげな表情の人物。寒山寺モチーフ。

 

第 2 章 質感描写を極める

御舟24才頃の作品には青を基調にしたものが多い。御舟自ら「群青中毒にかかった」と言っている。

速水御舟《洛北修学院村》1918年(24才) 滋賀県立近代美術館

農村の夕暮れ時を描いいたもの。夕暮れがひたすら青い。中毒にも程がある。

 

速水御舟《鍋島の皿に石榴》1921年(27才) 個人蔵

立体デッサンのゆがみ。油絵のような質感表現に挑んだ作品。日本画にはない、影が描き込んである。

 

速水御舟《遊魚》1922年(28才) 滋賀県立近代美術館

楕円で水の光を表現している。

 

速水御舟《春昼》1924年(30才) 山種美術館

一見どこにでもありそうな農家の軒下を描いたものだが、建物の中が闇で怪しさがある。屋根に止まる7羽の鳩。

 

速水御舟《墨竹図》1925年(31才)  霊友会妙一コレクション

水墨画。濃淡が強くレントゲン写真のよう。竹の描き方が琳派の画法と違うのが面白い。

 

第 3 章《炎舞》から《名樹散椿》へ―古典を昇華する

重要文化財 速水御舟《炎舞》1925年(31才) 山種美術館

最も有名な絵。軽井沢で毎晩焚火をし、そこに群がる蛾を描いたという。赤い炎の光とせめぎあう闇。蛾の周辺だけぼんやりと光る。この絵の不気味さには其一との共通点を感じずにはいられない。蛾が全部正面を向いているのも其一っぽい。

 

重要文化財 速水御舟《名樹散椿》1929年(35才) 山種美術館

京都市北区の昆陽山地蔵院(俗称椿寺)の古木を描いたもの。

かなりの衝撃を受けました。この絵は山種美術館のウェブサイトのヘッダに使われているので馴染みがありましたが、実物を見るのは初めて。まずは単純に、そうか、屏風だったかと。そして、色彩の美しいこと。其一やアンリ・ルソーを連想しました。背景は蒔きつぶしで、驚くほど均質です。ここで其一との関連に気付いたものだから、《日向葵》と《木蓮(春園麗華)》も其一を思い浮かべずにはいられませんでした。

 

第 4 章 渡欧から帰国後の挑戦へ

速水御舟埃及所見》1931年(37才) 山種美術館

ローマ日本美術展覧会の美術使節として渡欧。ヨーロッパ各地及びエジプトを巡る。エジプト壁画のような描き方。

 

速水御舟《暗香》1933年(39才) 山種美術館

暗がりに白く透き通る花弁。おしべが夜光塗料のように光る。御舟の狙った怪しさがわかりやすい。

 

速水御舟《白芙蓉》1934年(40才) 山種美術館

葉を墨で描き、芙蓉の花をたっぷりの胡粉を使って描く、花弁中心の赤が鮮やかです。御舟は「胡粉を溶いていると花そのものの様な気がする」と語ったそうです。

 

今回は《京の舞妓》と《菊花図》がなかったので、展示替えの後、再訪したいと思います。

 

見応え十分で疲れたので、Cafe 椿で休憩。速水御舟《紅梅・白梅》をイメージして作られた「春慶」を頂きます。シナモン風味の練り切りです。セットドリンクの緑茶は金粉入りでした。

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Cafe 椿 山種美術館内

 

この後、國學院大學学術メディアセンター、常磐松ホールでトークショー「日本美術応援団 速水御舟を応援する」に参加しました。

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出演者はお馴染み、日本美術応援団長の山下裕二先生と団員3号の井浦新さん。お二人とも学ランのコスプレがとてもお似合いです。かっこいー!

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満席の会場でトークショーが始まりました。お二人がコスプレじゃなかったのが残念。井浦さんは紺のコーデュロイのセットアップでELNESTのTシャツをお召しでした。靴はKEENだったのかな。白いソールのカカトの部分に赤が入ってた。

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御舟は、決して天才的な資質がある人じゃなく努力の人。常に自分のスタイルを変革していった人。今村紫紅岸田劉生、中国南宋絵画、尾形光琳葛飾北斎、鈴木其一、徽宗皇帝、絵巻、仏画俵屋宗達安井曾太郎伊藤若冲と様々な絵画を取り込み、自分の型を次々に破壊した人であると解説がありました。

今回も山下節が冴え渡り、あっという間の一時間半でした。