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企画展「地衣類―藻類と共生した菌類たち―」@国立科学博物館

2017年の最終開館日に、国立科学博物館へ行きました。

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お目当ては、日本館地下一階の多目的室で開かれている、地衣類展です。
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www.kahaku.go.jp

本企画展では、見えているのに見られていない、一見すると地味な「地衣類」の面白い姿や特徴をご紹介します。当館が所蔵する約25万点の地衣類標本から約70点を厳選し、身近な場所をはじめ高山や熱帯、南極など様々な環境に生きる地衣類や、人の暮らしとの関わり、含まれている化学成分などについて展示します。コケ植物と混同されがちな地衣類ですが、藻類と共生した菌類が正体であることや、菌類が地衣化することの意義などについても解説します。

地衣類とは

地衣類は、コケ植物とは別物で菌類の仲間。藻類と共生しているものをいう。
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コケ植物は葉緑体を持ち光合成をするが、地衣類は構造を作っている菌類に光合成する能力はなく、共生している藻類が光合成をする。菌類と藻類を分離して別々に培養することも可能。あくまで菌類を主体として分類命名されており、同一の地衣類でも共生している藻類が別種である例もある。

地衣類のいろいろ

 《針葉樹林帯の地衣類》
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亜高山帯のモミの木やカラマツの林には、幻想的に垂れ下がるナガサルオガセをははじめ、大型になるカブトゴケやフクロゴケのような葉状地衣類、カラタチゴケやハリガネキノリといった樹枝状地衣類などが見られます

上からだらりと吊り下げられているのが、ナガサルオガセです。手前中央にあるのはアンチゴケ。裏返して拡大鏡でみると、まるで猫の肉球のように見える海綿状組織があります。

《高山の地衣類》
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高山の地衣類は、日本と世界で共通しているものが多く見られます。これは地球が寒かった時期(氷期)に各地に分布を広げていた種が、気候が暖かくなった後に高山に残ったためだと考えられています。一方で、遠く離れた高山や極域圏の間で、現在でも地衣類が移動していることも示唆されています。

手前一番左にあるのがアオウロコゴケ。ゼニゴケの中にキノコが生えているように見えますが、菌類のキノコではなく、標本全体が地衣類です。

《熱帯~亜熱帯の地衣類》
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タコノキやヤシの木などの樹木上や岩場も絶好の生育場所です。熱帯地域では湿度が高いために生葉上にも多様な地衣類が育成します。熱帯地域の地衣類の分類は研究途上であり、毎年多くの新種が見つかっています。

手前中央にある拡大鏡を覗くと《生葉上地衣類》が観察できます。
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《街なかの地衣類》
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身のまわりの景色の中には必ずと言って良いほど地衣類が存在していますが、意識していない方がほとんどだと思います。まずは街路樹の幹や古い石垣などに30cmぐらいまで近づいてみましょう!

手前のやや右寄りに、ありふれて見られるウメノキゴケの標本があります。大気汚染に弱いので大気汚染の指標種になっているそうです。今度、近所でも見つかるか探してみようと思います。

スタジオ地衣類

幹の写真を背景にしたフォトコーナーがありました。f:id:Melonpankuma:20171228144841j:plain
横に蛾の羽の模様を模したマントが6種類用意されていました。忍者ごっこができますね。

そして、こちらは天然の擬態の標本。
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ゴマケンモンが6匹、アミメケンモンが2匹も隠れているそうです。

拡大して、見つけやすいように写真の色を調整してみました。
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二匹隠れています。わかりますか?

特殊環境の地衣類

多くの生物が生育困難な環境に適応している地衣類、きのこの上や岩の中など特殊な環境を好む地衣類もいます。また、地衣類自体が特殊環境になる場合もあり、「地衣生菌」は地衣類の上に生育します。
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下段右端、6個の細い紙を丸めたように見えるのがテマリチイ。オーストラリアなどの乾燥地帯に生育する地衣類で、風に吹かれてころころと転がって移動します。

地衣類に含まれる化学成分

地衣類が作る化学成分は構造が分かっているものだけでも700種類以上。そのうち約650種類は地衣類に特有です。
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リトマス試験紙は、リトマスゴケという地衣類の化学成分を利用して作られている。リトマスゴケは地中海性気候の地方に生えるので日本にはないが、代わりにウメノキゴケでも簡単にリトマス紙を作ることができるそうです。さらに、地衣類は染料としても有用なのだとか。右下の染料の説明にある赤紫色はウメノキゴケを使って染めたもの。

《光る地衣類アート》
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地衣類が作る化学成分には紫外線によって光を発するものがある。
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例えば、ゴンゲンゴケはリケキサントンという物質を作り、紫外線を当てると黄色に光ります。

地衣類と人の暮らし

地衣類は食用のものがあります。
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手前の左端にあるのは《世界最大?のイワタケ》 となっていました。「これ以上のイワタケを見つけたら是非ご一報ください。」とありましたが、イワタケは食用でもありますので、誰か見つけても食べられちゃいそうですね。

 

展示会場を出て、一階に上がったら、早くも来年の戌年にまつわる展示がありました。
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犬だらけ。上段真ん中のアキタイヌがプリミティブで、それ以外はブリード種です。この裏には野生のイヌ科動物の剥製も展示されていました。来年は犬モノの展示が多くなりそうなので、とても楽しみです。

 

今回も日本館南翼階段で化石探し。三階の北側の展示室には、立派なアンモナイトの展示物がわんさかありますが、それはそれ、これはこれ。
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 三階から降りる階段の中央付近、左側の手すりにアンモナイト発見。
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写真がかなり見づらいのですが、角にあるので横断面も見えるのが面白い。

一階にはウミユリらしきものもありました。
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これで2017年の科博は終了。東博の方が静かでくつろげるしカレーの匂いがしないしで、どうしてもあちらに行くことが多くなりますが、来年はもう少し、科博にも足を運べるといいな。