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燕子花図と夏秋渓流図@根津美術館

前日まで初夏の日差しだったのが、この日は陽が出ず肌寒くなりました。 前夜に食べ過ぎたせいで胃がしくしく痛むのをこらえて、春の恒例、光琳の燕子花図屏風を観に根津美術館を観に行きました。

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根津さん大盤振る舞いで、今年は其一の夏秋渓流図屏風も展示されています。
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気になったものを以下に残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

まずは特別展へ。

燕子花図と夏秋渓流図

1《四季草花図屏風 伊年印 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 17世紀》
伊年印とは俵宗達工房もの。薊、蒲公英、水仙、南天の他、江戸時代はじめには珍しかった種をふくむ60種類以上もの草花を金地が透けて見える淡彩色で繊細に描いている。ボタニカルアートとして楽しめる。

2《○ 桜下蹴鞠図屏風 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 17世紀》
説明を見なくてもわかるが、こちらも俵宗達工房のもの。屏風なのにまるで絵巻のような構図。こんな奇妙なことをするのは宗達以外考えられない。右隻は右上に建物。四本の桜の下で公卿、僧侶、稚児が蹴鞠を楽しんでいる。高く蹴り上げた蹴鞠は画面を飛び出して下半分だけ描かれているのが面白い。人物たちの目線が蹴鞠に向けられているので、観る側の目線も自然と導かれてジグザグと上下に視点が動かされる。左隻には垣根か幕かが斜めに描かれて、その外に従者がいる。一人は待ちくたびれてあくびをしているのか、大きく手を上げて伸びをしている。左端にはどろりとした水辺。

3《◉ 燕子花図屏風 尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 》
大きな画面に金と緑と青の三色だけで塗り分け、リズミカルに大胆にならぶ杜若。杜若は、右隻は水平に、左隻は右下がりになるよう斜めに配置されている。上下の他に屏風の凹凸でテンポが生じる。現代でも通じるこのデザイン性は脅威としか言いようがない。そもそも、この屏風は、伊勢物語で有原業平が東下りをする途中、三河国の八橋でカキツバタの歌として詠んだ「から衣、きつつなれにし、つましあれば、はるばる来ぬる、たびをしぞ思ふ」に基づく。この歌は折句といって、各句の頭の文字が「かきつばた」になっていて、そのリズム感が屏風にも見事に表されているというわけ。
年に一度、この時期だけの公開です。何度観てもよいものです。ソファに座って長く眺めました。

4《夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 19世紀》
右隻は初夏、左隻は秋の景色。檜の森を走る青い渓流が、屏風両端から左右を合わせた中央に向かって集まる。夏景には笹と山百合、秋景には茶色の羊歯と赤く染まった桜が描かれている。岩肌や檜の幹には緑の蘚苔が執拗に描かれている。
昨年サントリー美術館で開催された其一展で見て以来。ここだけ異様な空気。アクリル画のようなビビッドな色彩に圧倒されるし、檜の葉や山百合などが遠近感を無視して描かれているせいで、見れば見るほど空間がゆがんで気持ち悪い。気になって、ずっと見入ってしまう。多くの人が同じ思いを抱えているようで、この前が一番の人だかりになっていた。

5《夏草図屏風 尾形光琳筆 2曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀》
画面右上から左下にかけて晩春から夏の草花が並ぶ。公家近衛家熙の植物写生図「花木真寫」に出ているものが多い。

6《白楽天図屏風 尾形光琳筆 6曲1隻 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀》
唐の詩人白楽天が日本にやってきて漁師と問答をするものの、漁師は実は和歌の神様である住吉明神の化身で、和歌の偉大さを思い知らされて中国に追い返されるという謡曲にもとづく。白楽天の乗る船を大きく曲げて描き、円環的構図をもたらしている。

8《◎ 銹絵染付金彩絵替土器皿 尾形乾山作 5枚 施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀》
白化粧に錆絵と呉州で文様を描き、釉を掛けて焼成したもの。金彩を効果的に用い、四季折々の自然を見事に意匠化して描いている。梅花文に梅の絵、波立つ海を行く帆掛け舟、風に揺れる萱、満月に照らされる薄、水面に浮かぶ菱の実。

9《梅下寿老人図 渡辺始興筆 1幅 紙本墨画 日本・江戸時代 18世紀》
梅の下で扇を持つ頭の大きな寿老人。梅の木が文字のように折れ曲がって描かれている。始興は近衛家熙の御用絵師。

11《燕子花図 中村芳中筆 1幅 紙本着色 日本・江戸時代 18世紀》
期せずして芳中に会える。扇形の紙に杜若。芳中ならではの、ぼってりとした造形がかわいらしい。

12《七夕図 酒井抱一筆 1幅 紙本墨画淡彩 日本・江戸時代 19世紀
麻紐に五色の糸、水を張った角盥には梶の葉が浮かんでいる。七夕行事、乞巧奠(きっこうでん)によるもの。

14《高尾大夫・吉原通船図 歌川広重筆 2幅 絹本着色 日本・江戸時代 19世紀》
右幅には団扇形の簪をつけた高尾。足元には硯がある。夜空に尾を高く上げたホトトギス。左幅は浅草橋南方の駒形堂の近く、吉原通いの男を乗せた小舟が進む。細い下弦の月が浮かぶ。細い月明り、遠くの木々がやけに大きい。川沿いの柳や葦が淡く描かれている。
歌川広重は其一と同時代を生きた絵師。山形の天童藩が御用金を調達した商人に下賜かしするため広重に発注した肉筆画のひとつ。

15《山水図 谷文晁筆 1幅 絹本着色 日本・江戸時代 寛政6年(1794)》
寛政文晁の名品のひとつ。特徴的な岩山がそびえ、その麓には川が流れる。川岸には両手を広げ空を見上げる文人。黒衣で甕を胸に抱く従者が控える。

21《三夕図 春木南溟筆 3幅 絹本着色 日本・江戸時代 19世紀》
三幅に和歌の風景を描いたもので、右幅には寂連法師「寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ」、中幅には藤原定家「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」左幅には西行法師「心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ」の風景が描かれている。

22《狐嫁入図 高久隆古筆 1幅 絹本着色 日本・江戸時代 19世紀》
梅の咲く山間を進む狐の嫁入り行列。狐はシルエットで描かれている。画面全体に朱が散り、所々に鬼火が描かれている。

24《不忍蓮・枯野牧童図 渡辺省亭筆 2幅 絹本着色 日本・明治〜大正時代 19−20世紀》
右幅には蓮が咲く忍野池と上野の山。左幅には満月の下、牛の背に乗って笛を吹く童子が描かれている。淡墨と淡彩が軽妙。

【展示室5】 行楽を楽しむ器 ─堤重と重箱─

2《山水人物堆朱重箱及盆 1基 木胎漆塗 中国・明時代 17世紀》
朱色の盆で山水画が緻密に彫り込んである。

4《梨地謡寄蒔絵提重 1基 木胎漆塗 日本・江戸時代 19世紀》
葵文の銀徳利つきの行厨(こうちゅう)や花見弁当と呼ばれるもの。お重には八幡、石橋、老松、放生川、羽衣、芦刈など謡曲を題材にした絵が蒔絵で描かれていて豪華である。

3《色絵秋草文三段重箱 京都 1基 施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀》
陶器の円筒形をした三段重。緑と青と金色で菊、桔梗、女郎花が描かれている。淡い緑が春らしい印象を与える。

11《雪月花三社蒔絵朱盃 原羊遊斎作 酒井抱一下絵 1具 木胎漆塗 日本・江戸時代 19世紀》
朱色の三杯。月下の雌雄の鹿、雪笹と雀、松と夫婦岩(波を花に見立てたもの)が描かれたもの。とても美しくて目を惹き付けられた。

14《蕨漆絵提重箱 柴田是真作 2基 木胎漆塗 日本・明治時代 19世紀》
丸と四角が組み合わさった面白い形の重箱。皿は四角が二枚重なった形。形の面白さもさることながら、デザイン化された蕨の絵も洒脱。

【展示室6】 新緑のころ ─初夏の茶の湯

16《古染付葡萄棚水指 景徳鎮窯 1口 施釉磁器 中国・明時代 17世紀》
葡萄棚が描かれた古染付の八角形の蓋付き水差し。葡萄の実と弦がぐるぐると円を描くのが面白い。

18《黒織部沓茶碗 美濃 1口 施釉陶器 日本・桃山〜江戸時代 17世紀》
織部らしい歪んだ形が印象に残る茶碗。白い化粧部分に幾何学模様が描かれている。

20《銹絵染付絵替向付 乾山銘 5枚 施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀》
重文の8と同じく、乾山の錆絵の皿。百合、竹、蔦等の模様が意匠性に富んだデザインで描かれている。

21《秀衡椀 3合 木胎漆塗 日本・江戸時代 19世紀》
秀衡塗は、岩手県の伝統的漆器で大振りな三つの入れ子椀になっている。秀衡紋と梅の意匠が面白い。

 

美しい作品を鑑賞した後、お庭をぐるりと回りました。
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杜若はまだ蕾。やっと紫蘭が咲いたところ。今年はどの花も遅いです。
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藤花が咲き始めていました。
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小鳥の声が響く中、庭園でのんびりしました。

お昼に新緑の庭園を眺めながらNEZU CAFE でBLTサンド。
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カップに杜若の模様が入っています。お花が待ち遠しいですね。